研究内容 -マトリックスコンバータ-

伊東研究室では,従来のAC/AC変換器よりも高性能なマトリックスコンバータを研究しています。マトリックスコンバータは交流から交流へ直接変換可能な変換器です。従来の変換器はまず,交流から直流へ変換後,さらに直流から交流へ変換しています。その結果,変換回数が2回となり,損失が大きくなります。また,直流部に大型のエネルギーバッファが必要で,寿命が短く,メンテナンスが必要になるなど欠点があります。一方,マトリックスコンバータは変換回数が1回で,高効率です。さらに,エネルギーバッファを持たないため,小型化,長寿命化が可能などの利点があります。しかし,マトリックスコンバータは安定性に課題があり,電力系統が瞬時電圧低下(瞬低)した時の運転継続が難しいという問題があります。風力発電などの系統連系用途の電力変換器では,瞬低による大規模な停電を防止し,また瞬低後の系統電圧回復を早めるため,瞬低時に運転を継続する必要があります。

この問題を解決するため,伊東研究室では瞬低時に主回路保護用のスナバ回路を用いてマトリックスコンバータの運転を継続する研究をしています。シミュレーションと実機実験の結果,次のような結果を得ました。

  •   ■瞬低時に安定した運転継続が可能
  •   ■電圧回復後の需要家トランスへの励磁突入電流を防ぐため系統無効電流を制御可能
  •   ■発電機の加速や振動を防ぐため,瞬低中も瞬低前と同じトルクが発電機に印加可能

写真に瞬低時の実験結果を示します。瞬低時にスナバ電圧を一定に制御することで発電機電流が正弦波状に制御できています。さらに,系統に無効電流を流せており,運転継続できることが確認できます。


マトリックスコンバータ

瞬低時の動作波形